2019年8月22日blog | ご提案とお見積り

haikei

設計事務所の仕事の難しさに
「この提案がいったいどれくらいの金額になるのか」
が工務店様に見積もり依頼するまで分からないと言う部分があります。

ハウスメーカーや工務店であればある程度仕様の取り決めをする事で、
見積もりの見込みを立てる事が出来たりします。
また、過去の実績を蓄積する事で先の見込みを決定金額として取り決めるなど、
ルール化する事で金額確定を早くする事を可能にします。
そうする事で、早いところでは間取り提案から概算見積もり迄1週間なんて業者も存在したりします。

工事部門を持たない設計事務所の場合、このルール化が出来ません。
つまり、建物のご提案は出来てもそれが「〇〇〇〇万円になります」とご提案時にご提示する事が出来ないのです。
ですので、設計事務所は最初のご提案の際は、自身の経験に基づいて
希望金額から大体の建物ヴォリューム(建物の大きさ)を割り出してご提案を行う事になります。

この初期のご提案がとても曲者です。
予算に絶対に納めようと小さめな住宅でご提案すると要望を満たさない建物になってしまうかもしれません。
要望重視で全てを盛り込んだ事で大幅な予算オーバーになるかもしれません。
金額が分からない中でこのバランスを上手く検討を付けながらプラン提案を行う事になります。

当事務所のスタンスとしては、なるべくご要望を盛り込んだプランで工務店様にお見積りして頂く様にしています。
そして、オーバーが出た場合どこを削るか、もしくは代替案を提示するかを検討する様にしています。

これは私自身自宅を建てた経験に基づくところが大きいのですが、
もし、最初から予算枠内の事のみを考慮しご提案したとして、要望もそこそこかもしれませんが
「まあ、金額も納まったし良いだろう」
と言う感じでお住まいを建築したとします。
それで満足頂けるケースもゼロではないと思いますが、
「この要望を諦めなければどうなっていただろう」
「どうしてここをケチってしまったんだろう」
と言う後悔を感じるところが私は多い様に感じているのです。
更には、
「ここをケチらずにやっていたらいくらのプラス金額で出来たんだろう」
と思う事もあると思うのです。

一生暮らしていく住まいをご提案するにあたり、住み始めてからのこう言った後悔を
なるべく減らして欲しい、そんな思いや経験から
少々盛り込み過ぎになる事もありますが、ご要望+αまでご提案しています。
解らずやらないのと解った上で諦めるのでは満足度に違いがあると考えています。

しかしながら、何度も打ち合わせを重ねて決めて行った内容で、
見積もりを出したら金額がかなりの予算オーバーだった時、その調整を行うのはなかなか難しいものがあります。
お客様に諦めてもらうところ、
私自身この空間のここは諦めたくないと思っていたところ、
それらを断腸の思いで削ったり代替案にしたりしていきます。
お客様に対して、この工程がとても心苦しいところです。

それでも最終的にまとまった時には納得度が違いますので、
お客様と一緒になって悩んで解決案を模索しプランをまとめていきます。

今回は敢えてハウスメーカーや工務店に比べて
設計事務所のデメリットと言える部分を紹介致しました。
でも、この過程を経る事も住まいづくりとしては大切な事なのかな、なんて思ったりしています。
すぐ金額が出て検討出来るのも分かり易いのですが、商品を買うような感覚が強くなってしまいそうですよね。
出来ればあなたの住まいは
「大勢の人が関わり共につくった」
と言う実感をもって欲しいと願っております。
その方が住み始めてからもより愛着の湧く住まいになると思うのです。



静岡市の設計事務所:一級建築士事務所SAKAKI Atelier(サカキアトリエ)
当事務所の実績・提案はWorksをご参照下さい。
当事務所の住まいづくりに関する考え方はAbout home「住まいづくり大切にしたい11の事」をご参照下さい。
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