2019年11月6日blog | 住宅のIOT化。意外と何もしないと言う選択も。。。

haikei

私が大学に進学した頃、Windows95が発売されてまだ間もなく、
1人暮らしでパソコンを持っている人はまずいませんでした。
それから大学2,3年の頃になると、大学の授業でもCADを使う様になり、
大学4年になると恐らく知っている限りではほぼ全ての同級生がパソコンを持っていた様に思います。
私はそんなIT革命真っ只中で建築分野への就職をする事になりました。

今回は私が建築を仕事として選んでから現在に至る迄の背景を踏まえたうえで、
住宅のIOT化を設計としてどう住まいに組み込むべきかを
検討した一つの案を紹介したいと思います。

就職した当初は、会社にパソコンが一人一台もない時代でした。
インターネットに全ての端末が繋がれている訳でもなく、
アナログに頼るところも多かったように思います。

住宅設計としては、ITを考慮したネットワーク設備は皆無で
スイッチ、コンセント、TVのジャック、電話、インターホン程度が
電気設備のベースでした。

それから数年のうちに、インターネット環境が当たり前になり、
各部屋にLAN配線設備が求められる様になりました。
電話回線のみではなく光ファイバーの普及もあり、
屋外光ファイバー→宅内ルータ基地→各部屋へのLAN配線が
一般的な図式となっていったように思います。

そして、また数年が経ち、光ファイバーによる電話サービス
TVの双方向サービスが言われ始め、使うか使わないかはわからないが、
それらに対応する為、ルータからのLAN分配の基地に電話配線のルートも
加味する様になり、各部屋のLANの出口にはセットでTVジャックを
付ける様になりました。
この頃に住宅のIT化が言われ始め、一つの宅内パネルで
太陽光の受電や、床暖房、インターホン、照明器具、電動ブラインド等を
制御する仕組みが少し高級路線のお客様に受け入れられていったように思います。

更に数年、WiFiが各家庭に普及した事で、LANは各部屋に無くても
良いと言う考えが増えてきました。
TVもワンセグ等で対応すれば各部屋にジャックを引かなくても良いと言う
お客様もちらほら出始めた頃だった様に思います。

更に更に数年、スマホやタブレットの普及により、
今までの物理的設備に頼る必要のない環境が整ってきました。

そして現在、インターホンのチャイムはスマホで応答出来ます。
タブレットがあれば宅内の電気系統を制御出来るシステムも出来上がっています。
音声認識のデバイスもあります。

時代と共に、ITに関する電気系統の設備が増えていった系譜が
まさに私の建築を仕事としてきた人生と重なります。

しかし、現在のテクノロジーを目の当たりにして思う事は、
「もしかして住宅自体はもっとシンプルで良いのでは?」
です。

現在の環境を知って初めて言える事なので、
過去を否定している訳ではありません。

住宅がIOT化し、私のタッチ一つで、私の一声だけで
様々な電気系統を制御出来ればこんな便利な事はありません。
ただ、ここに住宅設備として過剰な初期投資はいらない時代になったのかもしれません。
よくよく考えればその方が、
フレキシブルにどんな古い住宅もIOT化に対応出来ると言う事ですしね。

いい時代が来た!

もしかしたら照明スイッチはいらなくなるかもしれません。
もしかしたら無接点充電の技術が進んでコンセントがいらなくなるかもしれません。
インターホンが壁から無くなる日はそう遠くない様に思います。

そしてこれらが意味する事とは、
「建築をより美しい空間に出来る可能性が生まれてきた」
と言う事です。

住宅においてスイッチやコンセントは生活感そのものです。
細かい設計者は何とかしてそれらが視線に入らない様に、
特に見せ場となる空間では気を使って設計を行います。
でも、実用性も大切です。
設計者はその狭間で設計を行います。

それらに気を配らなくても実用性も伴いながら、
より美しい空間を設計する事が出来る時代が
もしかしたらやってくるのかもしれません。

最後は設計者のエゴも入って来てしまいましたが、
皆様の住まいづくりの参考になれば幸いです。





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