2019年11月19日blog | 新築計画に意外と役立つ中学理科。南中高度

haikei

「この計画で光がちゃんと入るか心配だ」
少し前になりますが、当事務所にてご提案致しましたお客様より
頂いた言葉です。

今回は新築計画でどれくらい太陽の光が部屋に入るのか、
建てる前に検証する方法として、
南中高度の計算式を用いた検証方法をご紹介いたします。

まず、南中高度の計算式のおさらいです。
東京の緯度:北緯36度 →ざっくり35度とします。
地軸の傾き:23.4度
として、
夏至(6月20日頃)=90-35+23.4=78.4 →ざっくり78度とします。
                 →縦横比にすると1:0.2
冬至(12月20日頃)=90-35-23.4=31.6 →ざっくり32度とします。
                 →縦横比にすると1:1.6
春分(3月20日頃)=90-35=55 →55度 →縦横比にすると縦:横=1:0.7
秋分(9月20日頃)=90-35=55 →55度 →縦横比にすると縦:横=1:0.7
これがそれぞれの季節における南中高度となります。
(最初の90は太陽の接線方向を地軸とした定数です。
あまり深く考えず単純に90と覚えて頂いて良いと思います)

角度から縦横比を求めます。
上記の縦横比は縦(高さ)を1とした場合、影がどれくらい伸びるかを表します。

地域によって微妙な差はあるかと思いますが、
あくまで住まいの新築計画の参考指標としたいので
これくらいざっくりで良いかと思います。

次に建物の標準的な軒の高さです。
1階建ての場合は軒の高さは3m。
2階建ての場合は軒の高さは6m。
こう覚えて頂ければよいかと思います。

これらの情報を用いて、
例えば南のお隣が2階建ての場合、
春分の我が家の1階への光の入り方を考えると、
6m(2階建ての軒の高さ)×0.7(春分の日の縦横比)=4.2m
つまりお隣との離れ距離が4.2m以内だと
我が家にお隣の建物の影が差す計算になります。
実際には、建物には基礎があり窓も床より2m位の高さがあったりしますので、
(6m-2.5m(基礎分を足した地面からの窓の上端))×0.7=2.45m
光は我が家がお隣より2.45mの距離にあっても入ってくる計算になります。

しかし、当然ながら、太陽は動きます。南中高度はその日の太陽の
一番高い位置を指しています。特に寒い日は太陽が一番高い位置の時だけ、
光が入れば良いわけではありません。

理想とすれば、1年の内の約半分、秋分~春分にかけて日の光を室内で
享受出来れば寒さ対策に一役買う事が期待できます。
春分の太陽が出ている時間が12時間として、
そのうち4~6時間位太陽光が入れば有り難いでしょうか。

だんだん複雑になってきました。。。

日中取り入れたい太陽光の時間を6時間と仮定すると、
南中高度より太陽高度は約2,30度下がる事を考慮して建物の離れ距離を
検討しなければなりません。
春分で言うと55度-25度=30度 →縦横比にすると1:1.7

先の2階建ての南のお隣に話を戻すと、
(6m(お隣の軒の高さ)-2.5m(基礎分を足した地面からの窓の上端))
    ×1.7(春分の日南中高度の3時間後の太陽高度の縦横比)=5.95m
春分の日の日中6時間位は太陽光を室内にいれたいなと思ったら、
2階建ての南のお隣より5.95m離して家を建てる必要があると言う事です。

2階建ての軒の高さが6mで離れ距離が5.95m。
つまり、お隣の建物の高さ分、家を離して建ててあげれば
おおよそ1年の半分は我が家に太陽光を直接お届け出来ますよと言う事です。

夏至や冬至では太陽の動き方も変わる為、全てを当てはめる事は出来ませんが、
春分・秋分の日を求める事で、温かい季節、寒い季節にどう光を取り込むかの
指標を持つ事は出来ます。

如何でしょうか?
全てを文章にすると少々複雑になってしまうところもあったかもしれません。
しかし、この結論から導き出される
「お隣(特に南)の建物の高さと同じだけ離して建てる」
を検討する事で、
新築計画において、少しだけ我が家の明るさや寒さ対策の指標を
持つ事が出来たのではないでしょうか。
これはお隣の建物だけでなく、塀の高さ等にも使えます。

もし、この離れ距離が確保出来ないのであれば、
・吹抜けをつくる
・天窓をつくる
・お隣の建物の隙間を狙って窓をつける
等々対策が出来ると言う訳です。
是非検討してみて下さい。


皆様の理想の住まいへの一助となれば幸いです。





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