2019年9月23日blog | LDKの考え方が変わる。TVに依存しない間取りの時代

haikei

本日の打ち合わせでの事。
建て主様曰く、TVを見る機会がかなり減ったそうです。
現在のお住まいのアパートではリビングにTVを置いていない生活を送っていると。

今回は、TVの位置がLDKの間取りにどれだけ影響力を及ぼしているかを書きたいと思います。
そしてそのTVが仮に無くなる(無視できる)とすると
間取りの自由度がどれだけ広がるかにも言及してみたいと思います。

設計をする時、心の片隅に引っ掛かっていた事があります。
それはTVを中心としたLDKの間取りづくりです。
LDKのつくり方には色々なパターンがある様に見えますが、
実は、TVの位置が殆どのLDKの間取りを決定していると言っても過言ではありません。

TVの位置から間取りを決める例を挙げてみたいと思います。
まずTVの位置を決めるとします。
ソファはTVが見やすい位置になります。
キッチンは音の出る作業が多いので
TVの音を聞き易くする為に少し離した位置にします。
その離した間にダイニングです。
これでLDKは完成します。

TVがある生活ありきでTVの位置を最初に決めてプランニングすると、
意外と簡単にLDKはつくる事が出来ます。
逆にTVがある生活ありきの中でダイニングから間取りを
考えると意外に難しかったりします。

心の片隅に引っ掛かっていた設計者としてのジレンマはここにあります。
設計者は心理的空間を考え設計します。
壁から壁を何メートルにしたら広く感じるか。
天井の高さは何センチにしたら解放感を得られるか。
窓の位置はどの位置にしたら良い眺めを得られるか。
・・・
この設計的検討にはTVは入りません。
TVを中心において間取りを考えるのであれば
この空間を考えるプロセスは必要ありません。
「TVを見る」と言う事は「空間を見ない」とも言えるのです。

勿論、日常生活はこの極論で済む話ではありません。
TVも見るし、景色を見る事だってあります。
ボーっと天井を眺める事だってあるかもしれません。
日常生活は複合的です。

ただ、ここで言いたいのは、
「TVに囚われなければ間取りはもっともっと自由になる」
と言う事です。

TVが無ければリビングダイニングを分ける必要が無いかもしれません。
(家具を少なく出来、空間を有効に使えるかもしれません)
リビングダイニングをコンパクトにした分、屋外のテラスリビングを設ける事が出来るかもしれません。
単純に家の延床面積を小さくしてコストを削減出来るかもしれません。
子供の遊ぶスペースを広くとる事が出来るかもしれません。
外を眺める為にソファの位置を決められるかもしれません。

今、進めている打ち合わせでは、TVの位置を限定していません。
「TVを見る機会が減った」
と言う建て主様の生活習慣もありますが、
「壁にプロジェクタで投影しようか」
「ちょっとした動画ならスマホやタブレットで見れるし」
「TVの録画データを無線で飛ばして他の場所で見れるし」
「宅内アンテナを使えばTVジャックが要らないから、
コンセントのあるところならどこでもTVを見れる環境がつくれる」
等、新しい可能性を見ながら打ち合わせを進めています。
当初TVを置く予定でいた場所にソファを置けば、
新しい居所が出来ますね、とかいった空間利用の広がりも出てきました。

最近は薄いフィルムの様なもので窓に貼れるTVなんてものも
開発されているそうです。
TV側もNET動画を見れる機能を持ったり負けてばかりではありません。
ゲームをする方にとってはTV画面は重要だと思います。
でもVRという考えもありますね。

色んな可能性が見えてきます。
一つ言えるのはTVとソファがセットになったLDKの間取りの考え方が
常識ではなくなりつつあると言う事。

設計者は住まい手の大切にしている事に今まで以上に耳を傾け、
より未来に思いを馳せる事が大切になってきているという事なのかもしれません。

このお話が皆様の住まいづくりの一助となる事を願っています。



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