奥の余白

interior

静岡市葵区 用途:店舗併用住宅 LDK水廻りの部分改修 構造:木造在来工法
改修部分面積:41.02㎡ 
設計期間:2020年3月~2020年7月
工事期間:2020年8月~2020年11月
写真:橘 薫

余白と木質感を見直す

商店街の店舗奥、住居部分のリノベーションです。3代続く店舗併用住宅は減築、増築、改築が繰り返され、初期の頃を示す箇所には昭和3年の刻印が見られます。減築による梁の切断・補強、増築による新しい材料の接続、改築による芯ずれ等、時代の系譜に沿った変化が建物に現れていました。また、それらの改変を経た事による、壁体内の雨漏れ、断熱不足、土台の腐食、シロアリの浸食、排水経路の劣化や破損、継ぎ足された構造の接続不備等、本改修には難解な事案も多く存在しました。本改修では、意匠デザインの革新性よりもまずは現状の回復と住まいの継続性に重きを置いた側面があります。改修の計画案としては、来客を考慮したトイレ位置の変更以外は従来とほぼ同じゾーニングとしています。その中にあって、メインとなる居所はベンチシートを使用したロータイプのダイニングセットを採用しリビングダイニングを兼用する事によって従来の空間に意図的な余白をつくり、空間的なゆとりを生み出しています。革新的な意匠デザインを生み出しにくい小スペースだからこそ、一つ一つの細かいデザインを丁寧に行う事でデザイン全体の質を担保しています。昔ながらの商店街店舗の奥に佇む癒しとなる空間を目指しました。