3角形の中の3間角

KT5_0005

静岡市清水区 用途:個人住宅 階数:2階 構造:木造在来工法
敷地面積:166.91㎡ 建築面積:43.05㎡ 延床面積:76.90㎡(1F:41.39㎡/2F:35.51㎡)
設計期間:2023年9月~2024年7月
工事期間:2024年8月~2025年1月
写真:橘 薫
施工:大伊建設 https://ooi-kensetu.com/

3間×3間から考える空間づくり

三角形の敷地に建つ専用住宅です。街区は碁盤目でありながら、十字路に3角形の記念碑があり、それが当該敷地の形状に影響を及ぼしています。この計画では、変形敷地に対し「3間×3間」という比較的小規模な矩形を中心に配置し、空地をどう活用するかと言うアプローチで計画を進めています。3間×3間は4畳半4つを田の字に組み合わせた大きさです。本計画では、田の字の中心に鉄骨の通し柱を模した現し柱を据えるというシンプルな構成要素を組み合わせることで、多様な生活スタイルに柔軟に対応できる大らかな空間づくりを目指しました。3間×3間には、細かい仕切りを入れず、一部に吹抜を設け、LDK、寝室、クロースを一室空間として取り扱っています。また、田の字の記念碑寄りに4畳半の吹抜を配置し、大開口のコーナーサッシを設ける事で空間に広がりをもたせています。記念碑の三角敷地には樹齢100年以上の樹木があり、これが西日をやわらげ外部の視線を緩和してくれています。この環境を可能な限り享受出来る様、階段は線の細いシースルー階段としました。内装は、モノトーンを基調としています。落ち着いた濃淡あるグレーが空間全体を統一し、そこに差し込む光と影が、時間帯によって異なる表情を創り出します。無機質になりがちなモノトーンの空間ですが、記念碑の借景により周囲の緑や空が空間に取り込まれ、季節の移ろいを室内にいながらにして感じさせてくれます。「3間×3間」という、少し小規模に感じるグリッドによる計画ですが、一室空間化する事で、そのシンプルさゆえに住む人のライフスタイルや好みに合わせて、いかようにも変化する柔軟性を生み出しています。柔軟性が様々なライフスタイルを受け入れ、永く愛着をもって暮らしてくれる事を願っています。