R+hasso

rhasso

静岡市清水区 用途:個人住宅 改修部面積:53.56㎡(吹抜部含まず) 階数:2階
構造:木造在来工法
設計期間:2016年12月~2016年7月
工事期間:2017年7月~2017年10月
写真:橘 薫

有機が無機を包括する

空き家問題が顕在化して久しい。この住まいもその過渡期にあると言えるかもしれない。本計画は、旧東海道沿いに建つ築約60年の住宅の部分改修である。南北に隣家が密接し東に道路と接続した東西に長い形状をしている。建築当初からの家族や住まい方の変容により様々な問題が浮き彫りとなる。改修の視点は、部屋数を減らし男性単身者の住まいにスケールを合わせると言う単純なものである。2階の2部屋を減築し、LDKを全て吹抜とする。吹抜の設置に伴い水廻り配置を整理した。但し、ただ吹抜にするだけではなく場の落ち着きを得る事も空間に求め試行した。そして有機的な曲線でくり抜かれた壁を2面据え置くと言う案を採用した。有機的な曲線壁は、一室空間化を維持しながら緩やかに居所分けを行っている。食堂は居間と外部とのバッファ領域となり、居間にプライベート性としての落ち着きをもたらした。自由な曲線のくり抜きは、抜きたい箇所、塞ぎたい箇所を自在にコントロールする。壁になる部分を利用して構造補強を可能にする。広く感じられる無機物の閉じられた箱状の建築空間に、有機的要素を用い感覚的な場の落ち着きを図ったのである。ソファや家具上部の2階床面の水平構面もまた場の落ち着きをつくっている。この水平構面は火打ちを隠し、剛性面材を用いる事で水平剛性の補強の役割も果たしている。吹抜からのペンダント照明に傘付のものを採用したのも、光を必要以上に上部に照らさず明かりの重心を落とし場の落ち着きを得ようと狙った手段の一つである。矩形の開口部より有機的な植栽や稜線を眺める元来の手法から逆転した、曲線の開口から障子等直線の建築造作を望む「有機が無機を包括した空間」となった。小分けにされた居室を一室空間化した今回の改修工事。有機的造作を用い機能的な問題解決を試みた結果、遊び心ある意匠となった。なにより、住まい手の情緒に訴えかけた心を豊かにする空間となった事を期待している。