ある空間に入った時に真っ先に目に入ってくるけれどあまり意識しないもの。
それが壁や天井の仕上げだと思います。
例えば、木の板を貼ってみたり、個性的なタイルを貼ったりすれば注意を集める存在になるかもしれません。
しかしながら、大抵の住宅では白い壁紙を貼って仕上げ、注意を惹かせる為には
飾り棚をつくったり、何か置物を置いたり、絵を飾ったりして、
白い壁紙はあくまでそれらの背景的存在になる事が多いと思います。
そんな白い壁はお客様が来られても「この壁の仕上げは何?」などと聞かれる事はまずない存在です。
それくらい、存在としては薄い様に感じる白い壁ですが、
実はめちゃめちゃ重要。
空間の美しさを決定するかなり大きな要因となります。
また、自分の家となると途端に気になる存在となってくるものなのです。
当設計事務所としては、そんな背景的存在の壁・天井の仕上げに汎用的な壁紙を使うのではなく
塗り壁で質感をつくって綺麗な背景として空間を演出したいところ。
打ち合わせとしても、金銭的に余裕があれば左官仕上げ、ちょっとコストを抑えたければ
ローラーでの塗装。もっとコストを考えなければならない時は壁紙(クロス)を選択。
と言う、順序で提案を考える事が多いです。
現在、ご提案中の案件でも他に漏れず、先の順序で考えておりましたが、
コストの掛けどころを探る中、ベースとなる壁・天井は壁紙にする事になりました。
なるべく塗り壁でと考えるところは今も変わりありませんが、
今回壁紙での提案を考える中で、意外に色々な種類の壁紙がある事に気付かされます。
・ボコボコを強くして目地を目立たなくしたもの。
・なるべくのっぺりさせる事でプロジェクター投影に対応したもの。
・珪藻土等を混ぜ、吸湿性を高めたもの。
・抗菌・防カビを強化したもの。
・傷がつきにくい様にコーティングを施したもの。
様々な選択肢があります。
お客様と一緒になって関心を示しながらカタログを広げていました。
いくつか候補が上がりとりあえず打ち合わせは終了。
打ち合わせ後は、更にカタログを読み込み
私なりに今回のお住まいにマッチする様な素材をピックアップしていきます。
アクセントに柄を入れるご要望も頂いたのでそちらも選定。
ここに関してはセンスが問われます。
壁紙としてのアクセントはどういうものが良いのか?
タイル柄や木目柄等は、「それなら本物を使いたいな」と言う気になってしまう為、
除外します。石目や織物柄等を露骨に模したものも除外です。
お客様が計画当初ご要望されていたアンティークな感じを思い出し、
植物柄や有機的な曲線柄が目に留まります。
昔の喫茶店や洋食屋に有りそうな柄です。
一見すると古めかしい感じもしますが、新しい空間に採用すれば逆に新鮮さを生むかもしれない。
そうなると、使ってみたい壁紙がどんどん増えていきます。
結局2社で20枚程のサンプルを請求する事にしました。
話は元に戻りますが、ベースとなる壁紙はあくまで住まいの背景的存在です。
壁紙をカタログから選びだすと、ついつい色々なアクセント的な柄ものを使いたくなってきます。
しかしながら、住まいに彩を添えるのはあくまでも住まい手の「モノ」だと思います。
何もない空間に住まい手が自分達の持ち物を持ち込む事で初めて「デザイン=設計」になります。
今回のお客様もその意識があり、色々な壁紙を楽しそうに見られていましたが、
最終的にはアクセントとなる箇所は1,2ヵ所に絞り込み
その他はベース一種類で統一と言うところで落ち着きました。
「木を見て森を見る」に長けたお客様です。
良い空間になりそうです。
静岡市の設計事務所:一級建築士事務所SAKAKI Atelier(サカキアトリエ)
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