2019年10月26日blog | 地鎮祭をやると言う事。安全祈願以外のメリット

haikeimatsuri

昨日、当事務所設計監理物件の地鎮際が行われました。

私の経験上では殆どの建て主様が地鎮祭をしております。
当事務所名もサカキアトリエと玉串に由来する部分もありますしね。
これは余談でしたが、そんな現状があり地鎮祭はほぼ当然の様にやるものだと
認識していた部分があります。

しかし、ネットで色んなサイトを見てみるとそうでもない現状があるようですね。

今回は地鎮祭をやる事の意味を、昨日の事例を踏まえて紹介したいと思います。


先ほどの「そうでもない現状」とは、
戸建て注文住宅における地鎮祭の開催件数がおよそ半分位ではないかと
書かれたサイトが見受けられる事です。
私の経験上では、前職より設計に至らなかったお客様を含め数百件関わってきた中で
地鎮祭を行わないと意思表示されたご家族は2件のみです。
その2件のうち、1件はキリスト教で神はキリストのみと言う考え、
もう1件は、単に信心が無いというものでした。
ちなみに建売住宅に関して地鎮祭を行うというのはあまり聞いた事がありません。
注文住宅と建売住宅は大体同じくらいの棟数が年間建っていると言われています。
とすると、戸建て住宅における地鎮祭の開催件数は、
年間竣工棟数の1/4位なのではと言う推測が立ってきます。
更には、分譲マンション等は、建て主がいない施工業者のみによる
地鎮祭を行っていると思われますので、
建て主様が直接関わって地鎮祭を行っている住まいと言うのは、
意外と少数側になるのかもしれません。

私自身、正直信心深い人間ではない方なのですが、
地鎮祭に関しては行った方が良いと言う考えをもっています。
(勿論、建て主様のご意向が最優先ではありますが)

その理由として、まず建築工事の側面からみてみます。
・地鎮祭を行うと、そこが建て主様、施工業者、設計者にとって
 実質のスタートラインとなります。地鎮祭が無かったとしても、
 関係者が一同に会しての開始の儀式は必要になると思います。
・スタートラインとして、敷地のどの箇所に建物が建つのか、
 建て主様と確認が出来ます。地鎮祭時には建物が建つ場所に
 テープを張ります。(これを地縄張りと言います)
 そのテープの位置で建物が建つ場所を確認できます。
 もう、本当の本当のギリギリとしてここで、
 「やっぱり位置を代えたい」と言える最後のタイミングかもしれません。
 (でも、正直言うとここで変更を要求されると確認申請の出し直しが
 発生したり、それに伴う図面や書類の修正が発生したりと、
 作業が増える事も多いです。お施主様にとっては一生の買い物なので、
 ここに面倒くささを出す事はナンセンスだと思うところですが、
 場合によっては確認申請許可に遅れが生じ、着工が遅れる事があります)
・地面の高さを確認出来ます。土地によっては昨今の大雨の影響を
 考慮し、地面の高さを盛土して上げるなどの検討も必要かもしれません。
 但し、地面の高さを上げる事は、自分本位でやっていいものではない場合があります。
 平らな分譲地等では土地の高さを決められている場合があります。
 特に決め事が無い地域でも、例えばお隣より1m土地を高くしたらどうでしょう。
 逆に考えて、お隣が建て替えを期に土地を1m高くしてきたらどうでしょう。
 大雨による雨水はお隣からこちらへジャブジャブ流れてきます。
 嫌ですよね。
 こうしたお互いの共存を意識する事も地面の高さを決定する上では
 大切な事なのではないかと思います。
・スタートラインとして、近隣への工事のご挨拶廻りへのきっかけになります。
 また、地鎮祭を行う事で、廻りも意識してくれます。
・建て主様のご家族、ご親戚が出席した場合、施工業者が挨拶を出来ます。
 現実的な相続の問題もあるかもしれませんが、土地を使用するとは
 建て主様意外にも影響があるものだと大抵の建築業者は心得ています。
これだけでもかなりやる意味はあるのではないかと思います。

また、心理的な側面として、
・スタートの心構えが出来る。
 これは、建て主様、施工業者、設計者全てにおいてです。
・地鎮祭の本来の意味通り、土地利用の許しを神様に乞う。
 工事の安全を祈願する。
・家族の思い出をつくる。
こう言ったやる意味が挙げられます。
これは私個人の意見ですが、意外に一番最後の「家族の思い出」が
やっておいて一番良かったと思える理由になるのではと思ったりしています。

10年後、20年後、新築時にやった地鎮祭、それ自体にそれ程の意味を
感じて過ごされるご家族はあまりいないのかもしれません。
しかし、地鎮祭で撮った家族写真が、建築と家族の結びつきを
再認識させてくれるものとなるのではないでしょうか。
そしてそれが住まいへの愛着を再認識させてくれる一枚になると
私は思います。


地鎮祭をやるやらないはあくまで建て主様のご意向次第です。
強要するものではありませんし、
当事務所でもご意向に沿う形を第1としていますし、
「うちはする気はない」
と言われたからといって、
先のやる意味を説いて説得する事もしていません。
金銭面の話をすると初穂料・玉串料と言った神主様へのお礼が発生します。
私が住む静岡市では3万円が一般的です。
これらを前提として、今回は地鎮祭をやる事の意味を書いてみました。

このブログが皆様の判断材料の一助となれば幸いです。

そしてこれからいよいよ現場です。
1年かけて打ち合わせて図面化してきたものが実際の形になる工程です。
気を引き締めて行きたいと思います。






静岡市の設計事務所:一級建築士事務所SAKAKI Atelier(サカキアトリエ)
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